わたしはわたしの憧れの在処を知っている。憧れはちょうど川のようなものだ。川のどの部分が川なのではない。なぜなら川はながれるから。きのう川であったものはきょう川ではない、だが川は永遠に在る。……
三島由紀夫の公的な処女作『花ざかりの森』の一節です。書かれたのは昭和16年、三島は16歳。早熟な彼の才能はこの時点で開花し、文学的な世界観をすでに先取りしていました。
今月は「ボジョレー・ヌーヴォー」のご紹介です。
若飲みを思い切り楽しむワインの代表格です。今年の新酒がフランスから航空便で日本に届けられ、時差のため現地よりも8時間早く解禁になります。
「ボジョレー・ヌーヴォーなんて、ワインのことを何も知らない者が有り難がって飲んでいるだけの、水っぽい、くだらないワインだ」という声も聞こえてきますが、そう頑なにならず、ちょっと気のきいた妥協ぶりをみせようじゃありませんか。日本人は旬を好む民族。季節を4つどころか12に細分化し、月ごとにその繊細な移り変わりを感じ取ろうとします。
フランスの中東部、ソーヌ川に沿って細長く南北に走る地区、ブルゴーニュ。ボジョレーはその最南端に位置します。ガメイ種の葡萄を用い、マセラシオン・カルボニック(炭酸浸漬法)と呼ばれる特殊な製法で醸造されます。アペラシオン(ACまたはAOC:原産地や産出方法に関する行政的な規制)は以下の4つ。
1 村名ボジョレー:この地域の最良のもの。サンタムール(St-Amour)、ムーラン・ア・ヴァン(Moulin-a-Vent)など現在10ヵ村が村名ワインを名乗れる。
2 ボジョレー・ヴィラージュ:村名ものの畑と畑の間、及びその周辺。村名ものの次に格付される。
3 ボジョレー・シュペリエール:アルコール度数規制が普通のボジョレーより1度高い。三番目の等級。
4 普通のボジョレー
際立った果実味、イチゴに似た香り、発酵の名残の微発泡。なかでもヌーヴォーは、他のワインには決して真似のできない、まるで十代の少女のような溌溂さがあります。 |
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ジョルジュ・デュブッフの ボジョレー・ヌーヴォー |
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ルイ・ジャドの ボジョレー・ヴィラージュ・ プリムール |
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今回はジョルジュ・デュブッフ(Georges Duboeuf)とルイ・ジャド(Louis Jadot)を飲みました。ルイ・ジャド社のエチケットに書かれている“プリムール(Primeur)”はヌーヴォーと同じ意味で使われます。このふたつ、味は正反対。前者は、とにかくフレッシュ! 口中いっぱいに広がるベリー系の味と香り。摘みたての葡萄を満喫できます。後者は、完成度の高いワイン。味と香りの絶妙なバランス。若いのに落ち着きすら感じさせます。
さあ、ご一緒に「ワインの森」の奥深くへと迷い込みましょう。
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